Somatic Experiencing®


SE™とは 少し詳しい説明

 

トラウマのメカニズム(ポリヴェーガル理論を参考に)

 

ポリヴェーガル理論を参考に、トラウマの背景にある神経生理を図式的に示します。

人を含む哺乳類動物は、脅威に直面したときの対応を①→②→③の順で階層的に変えていきます。

まず、最も社会的な哺乳類の生存戦略から始めて、最も原始的な爬虫類の生存戦略へと進化上の発展を逆向きに降りていくことになります。

 

①まず、脅威に対して、仲良くしたり、打ち解けるような態度で、社会的な交流を図って乗り切ろうとします。

主に腹側迷走神経のシステムが使われます。

〈社会的つながり〉の段階

 もし、これがうまくいかないと 

 

次に、逃げる/闘うなどの行動を起こします。

主に交感神経のシステムが使われます。

〈可動化〉の段階

もし、これがうまくいかないと

 

最終手段として、生理学的に起こる凍りつきの状態へと移行します。

主に背側迷走神経のシステムが使われます。

〈不動化〉の段階

 

※SE™では、③の状態の中には②のエネルギーが未完了のまま閉じ込められていると考えます。そのエネルギーを安全な環境のもとで少しずつ解放していくことがSEセッションの意図するところとなります。

 

 

野生動物の場合

 

例えば、インパラがチーターから逃げている場面を想像してみましょう。

 

そのときインパラは②〈可動化〉逃げる、の状態にあります。

 

逃げることがうまくいかないと

↓ 

③〈不動化〉凍りつきに移行することになります。

 

このとき、痛みを感じなくなることで苦しまずに済んだり、死んだふりをすることで生存確率を高めることができるというメリットもあります。

 

チーターが去り、死なずに済んだ場合、インパラは逃げる際に使われるはずだった未完了のエネルギーを身体をブルブルと震わせて解放・完了します。その後は通常の生活に戻ることができます。トラウマを抱えることはありません。

 

 

人間の場合は?

 

人間も動物なのだから、同じように、閉じ込められたエネルギーを解放できるはずです。

 

しかし、人間は高度に発達した理性脳をもちます。理性脳のはたらきは、エネルギーを閉じ込めるフタのようなものとして機能してしまうことがあります。養育環境、社会規範、恥の概念などが関わってくることも多く、ただ本能に従うようすすめるだけでは、野生動物のようにうまくエネルギーを解放・完了することはなかなかできません。そのため、技法が必要となります。

 

どのように、未完了のプロセスを完了するかは個別のケースによりますが、セッションが展開していく構図を示すために、Depression, Aggression, Life forceの関係を記します。

 

 

Depression, Aggression & Life Force

 

Depression(抑うつ状態)

Aggression(健全な攻撃性、交感神経の活動)

Life Force(生きる力、バイタリティ)

はそれぞれどのように関連しているかということについてです。

 

ピーター・ラヴィーン氏は、”Depressionとは、Aggressionが妨げられた状態だ"と述べています。

Depression(抑うつ状態)の基盤には、凍り付きと似た精神生理学的パターンがある、と見ます。

 

上記の①②③に関連づけて述べると

 

Aggressionを表現してはダメだと言われたり、しつけや社会規範などによって、Aggressionを抑え込まなければならない状態に置かれたりすると

Depressionに陥りやすくなる、ということです。

 

Aggressionには、Rage強い怒りなど制御の難しいものも含まれますし、はしゃいだり、踊ったり、NO!と言ったり、といった生きていく上で必須となる活動もあります。

 

Depressionの中には、Aggressionのエネルギーが閉じ込められていて、この精神生理学的パターンは、トラウマのパターンに似たものになります。

Depressionから抜け出すためには、その中に閉じ込められているAggressionを解放してうまく使えるようにサポートしていくことが肝要となります。

 

この解放のプロセスを短くまとめると

 

①<社会的つながり>

②<可動化>

③<不動化>

 

の逆向きのプロセス、つまり

 

Life Forceとつながった状態に戻る

↑ 

Aggressionの解放プロセスを少しずつ経て 

↑ 

Depressionから

 

ということになります。

 

Life Forceとつながった状態は、単に〈社会的つながり〉が可能な状態に戻る、ということだけではなく、トラウマの後の成長を遂げ、人として深みを増した状態と言えるのではないでしょうか。

 

"SE is connecting to one's Life Force" "SEとは、生きる力とつながることだ。"と、ラヴィーン氏は述べています。

 ※ポリヴェーガル理論については、近年、参考となる日本語書籍が出版されていますので、詳しくはそちらをご参照ください。

・ポリヴェーガル理論入門(春秋社)ステファン・ポージェス著 花丘ちぐさ訳

・ポリヴェーガル理論を読む ーからだ・こころ・社会ー(星和書店)津田真人著